新型コロナウイルス感染拡大のなか、デジタル・トランスフォーメーションは進展し、ニューノーマルのかたちも見えてきました。我が国の教育政策でも、 GIGA スクール構想やデジタル教育プラットフォーム検討事業、未来の学校プロジェクトなど、これまでの情報化の遅れを取り戻し、世界の最先端をめざすトレンドが力強くなっています。今後さまざまなシステムやツールでデータ連携が図られることで多くの作業は自動化され、人間はより学びの本質的な活動に集中でき、新たな学びの実現や付加価値サービスを創出できるようになることが期待されます。さらに人工知能( AI )や教育 IoT などの導入によって、公正に個別最適化された学びは安心・安全に実現されていくことでしょう。教育デジタルエコシステムの実現は、リソース開発のさまざまな無駄を省くとともに、働き方改革を推進し持続可能な開発目標( SDGs )の理念にも合致したものになるはずです。
この1 年間、 IMS 技術標準は、より多くのステークホルダーにみなさまにご関心をもっていただき、その導入事例・実践事例も急増しました。本年の IMS Japan Conferenceは、 IMS Global における技術標準と Good Practice の最新事例をご紹介するとともに、未来の設計図を語り合う場としたいと思います。
日本IMS協会 運営委員長 山田 恒夫
開催テーマ
「 学びの DX 」 を実現する国際技術標準
一日目(2021年9月9日(木))
11:00 テクニカルセッション LTI部会 LTI 最新動向 & ハンズオン
LTI 1.3 概説と最新動向 (15分)
LTI 1.3は従来のLTI 1.1とは異なり、OAuth2とOpenID ConnectをコアとするSecurity Frameworkに準拠し、セキュアなエコシステムを構築するための標準として重要な位置を占めています。2019年の公開から2年が経過しセキュリティの見直しや新たな標準が提案されているので、それらの概要を解説します。
常盤 祐司 日本IMS協会 技術委員長
LTI 1.3 ハンズオン (30分)
LTI 1.3 の動作を理解するためのオンライン実習を行います。参加に必要なものはWebブラウザのみで、学習管理システム (LMS)と外部ツールの両方の設定項目と処理の流れを見ていきます。
田中 頼人 サイバー大学 准教授 (LTI国内適用検討部会 副主査, IMS Certified Trainer)
13:05 IMS Global 特別講演 Colin Smythe IMS Global Chief Architect
「Improving EdTech Interoperability: Conformance, Certification and Characterization(EdTechの相互運用性の向上:適合、認定、および特性評価)」
認証は、IMS EdTech エコシステムの重要な部分です。認証は、持続可能な EdTech エコシステムの作成に対するベンダーの取り組みを示しています。 IMS メンバーシップの利点の1つは、IMS 製品ディレクトリの下に認定製品をリストアップできることです。このディレクトリは、IMS 相互運用性認定に合格した製品の公式のリストです。対応する適合性テストシステムは、IMS 仕様の開発の一部として作成されます。これらの適合性テストシステムは、認証を実証するために使用されます。 IMS 仕様の採用と適応のサポートを改善する取り組みの一環として、特性評価を導入しました。特性評価は、展開されたシステムが関連するIMS EdTech 相互運用性仕様をサポートする方法についてさらに詳細を提供します。このプレゼンテーションでは、IMS チーフアーキテクトが次のことを説明します。
1)適合性と認証の重要性。
2)コンプライアンスが相互運用性の有用な尺度ではない理由。
3)相互運用性を保証するために特性評価をどのように使用できるか。
4)日本のIMSコミュニティがどのように特性評価を使用する準備を始めることができるか。
14:00 テクニカルセッション 常盤 祐司 日本IMS協会 技術委員長
IMS Technical Congress 2021からみるIMS技術動向
2021年8月に開催されたIMS Technical Congress
2021では14のセッションが行われ、IMS技術標準の策定プロセスの解説、IMS技術標準の中核をなすLTI1.3、QTI3、CLR、Security Framework、Common Data ModelのUpdate、そして今年いよいよ公開が予定されるEdu-APIに至る広範囲な活動内容が報告されました。本セッションでは、このTechnical Congressで報告された技術動向を簡潔に紹介し、それらから今後のIMS GLCが進もうとしている方向を展望します。
15:05 招待講演 熊本大学 喜多 敏博教授 中野 裕司教授
熊本大学におけるIMS技術標準の活用
IMS技術標準に関して、熊本大学における活用事例を中心にご紹介します。LMSの学務システム等とのデータ・認証連携や機能拡張、各種システムのログ集積へのIMS技術標準の利用、そのためのツール活用、問題点や今後の展望に関してご紹介します。
16:00 部会セッション Caliper部会 梶田 将司 京都大学 教授(Caliper Analytics 関連標準国内適用検討部会 主査)
Caliper Analytics から見た LEARNING DATA & ANALYTICS イニシアチブ最新動向
IMS Global では、Caliper Analytics は LEARNING DATA & ANALYTICS イニシアチブに位置付けられ、OneRoster、Edu-API、Student Learning Data Model との連携により、学習プロセスを評価し、組織的な改善に向けたデータ分析の枠組みを提供しようとしています。本報告では、Caliper Analytics の最新標準化動向を軸に、関連する OneRoster、Edu-API、Student Learning Data Model の取り組みを紹介します。
16:30 部会セッション CASE研究会 田中 頼人 サイバー大学 准教授 (CASE研究会・
高等教育生涯学習分科会)
1. CASEとは何か
学習・教育上のスキルや能力に関する情報を扱う技術標準CASE®(Competency and Academic Standards Exchange)の概要を紹介します。ディジタル教材、学習管理システム、評価ツール等の関係者や、学習・教育エコシステムの促進をお考えの方が主な対象です。
宮崎 誠 帝京大学 助教(CASE研究会・高等教育生涯学習分科会)
2. CASEにおけるREST APIとその利用
データの標準化は、データを相互利用できるようになることが大きな魅力です。CASE® で定義された REST API と JSON データによるコンピテンシーの取得や交換方法について実践例とともにご紹介します。
二日目(2021年9月10日(金))
10:00 一般・テクニカルセッション デジタルバッジ部会 デジタルバッジ、ハンズオン
「ハンズオンセミナ: デジタルバッジの作成から検証まで」
デジタルバッジセッション 1(40分)
オープンバッジ基本コンセプト・ハンズオン
IMS Globalのオープンソース基に日本語化した検証システムをハンズオンで使用して、オープンバッジの主要技術(UnBake, Verify, Validate)について理解し、自社のオープンバッジ実装計画を検討する際の基本知識を習得することが出来ます。
・自社システムへのオープンバッジ表示方法
・自社システムと連携したオープンバッジ管理方法秦 隆博 デジタル・ナレッジ 教育テクノロジ研究所 シニア・フェロー(デジタルバッジ関連標準国内適用検討部会 副主査, IMS Certified Trainer)
デジタルバッジセッション 2(40分)
オープンバッジ・プラットフォーム・ハンズオン
オープンバッジ・ネットワーク財団のプラットフォームをハンズオンして、オープンバッジ・プラットフォームの3つの機能(オープンバッジ作成:Make, オープンバッジ管理:Host, オープンバッジ発行:Bake)を体験することが出来ます。
吉田 俊明 一般財団法人オープンバッジ・ネットワーク 常務理事 (デジタルバッジ関連標準国内適用検討部会)
11:30 一般セッション 山田 恒夫(日本IMS協会 理事) 藤原 茂雄(日本IMS協会 事務局長)
IMS ビギナーズセッション
日本IMS協会のイベントが初めての方や、IMS技術標準をもう少し知りたいという方向けに、1)日本IMS協会とIMS Global Learning Consortium, 2)日本IMS協会の会員組織と活動、3)e ラーニングや教育DXのためのIMS技術標準、4)外から見えない会員のメリット、をご紹介します。
13:20 IMS Global 基調講演
「Enabling All Learners to Achieve Without Limits(すべての学習者が無制限に学習できるように)」 Rob Abel氏 IMS Global CEO IMSグローバルラーニングコンソーシアムの CEO であるロブ・アベル博士が、IMSの最新の状況と重点分野を紹介します。アベル博士は、2020年のIMS年次報告書のハイライトについて説明し、2021年から8月中旬までの進捗状況の詳細も提供します。教育工学におけるコラボレーションの利点が COVID 時代を通じて明らかになったため、IMSは現在、記録的な速度でメンバーシップを増やしていますが、学習をサポートするテクノロジーの使用が増えるにつれて、将来的にも明らかに非常に重要です。議論された重点分野のいくつかには、IMS TrustEd Appsプログラム、LTI Advantage、デジタルクレデンシャル、および教育研究のためのアーキテクチャを可能にするためにIMS Caliperおよびその他の標準を利用する新しいトレンドが含まれます。
14:00 リーダーズトーク
「COVID-19パンデミックと教育デジタルトランスフォーメーション(DX)」
COVID-19パンデミックのなかで、教育デジタルトランスフォーメーション(教育DX)はむしろ加速した感があります。(教育DX実現のソリューションとして、さまざまなシステム連携を実現するデジタルエコシステムがあり、その前提としてセキュアな相互運用性を保証する技術標準があります。)本セッションでは、日本におけるIMS技術標準普及を先導するお立場の理事会各社のリーダーに、我が国、そして世界における教育DXの展望と課題をおききします。
白井 克彦 早稲田大学 名誉顧問(日本IMS協会 理事長)
大久保 昇 株式会社内田洋行 代表取締役社長 (日本IMS協会 副理事長)
岸田 徹 株式会社ネットラーニングホールディングス 代表取締役議長(日本IMS協会 副理事長)
川原 洋 株式会社サイバー大学 代表取締役学長(日本IMS協会 理事)
吉田 自由児(よしだじゆうじ) 株式会社デジタル・ナレッジ 代表取締役COO
司会:山田 恒夫 放送大学 教授(日本IMS協会 理事)
15:05 招待講演 三石 大 東北大学 准教授
東北大学におけるオンライン学習環境の歩みと標準化対応
東北大学では、2021年の学習支援システム(LMS)の更新を機に、これまでの独自開発でオンプレミスで運用するシステムに換え、学習ツールの互換性に関する技術標準であるIMS LTI、ならびに学習履歴の記録方式の技術標準であるIMS Caliperに対応し、パブリッククラウド上で運用するLMSを導入しました。本報告では、オンライン学習環境に対する東北大学のこれまでの取り組みをご紹介するとともに、これまでの運用で確認された課題や要望にもとづき、今回のシステムで目指す方向性についてご紹介します。
15:50 日本IMS協会一般地域・連携会員 事例紹介
話し合い見える化サービス Hylable Discussion のLTI1.3対応 ハイラブル株式会社
ハイラブル株式会社は話し合いを録音・分析・可視化するサービスを複数展開しています。
リアルの場での対面の話し合いを可視化するサービスHylable Discussion、およびWeb会議システムでの話し合いを可視化するサービス Hylable についてLTI1.3に対応しました。
その背景や具体的な実装方法についてMoodleでのデモも交えながら紹介します。
大阪教育大学 学術部 学術連携課 NPO法人CCC-TIES附置研究所
大阪教育大学におけるデジタルバッジの導入事例
大阪教育大学では、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今年度の教員免許更新講習を独自講習としてWeb上に開設し、オンデマンド型で実施する必修講習と選択必修講習を皮切りに7月20日(火)にスタートしました。本講習の一番の特徴は、講習終了時に履修完了デジタルバッジが発行されることです。このデジタルバッジは、NPO法人CCC-TIESによりIMSオープンバッジを提供することで実現したものです。NPO法人CCC-TIESは、2006年からオンライン教育のシステム構築、ソリューション、コンサルティングを手掛けてきました。本報告では、大阪教育大学とNPO法人CCC-TIESによりどのようにオープンバッジが提供され、どのような評価を受講生から受けたかについての報告を致します。
一般財団法人 オープンバッジ・ネットワーク
いよいよはじまったオープンバッジの発行と活用
日本でもオープンバッジの発行が各所で始まりました。この報告では、学校・資格認定協会、研修会社などによるオープンバッジ発行事例についてご紹介いたします。また、発行されたバッジの活用イメージについてもご紹介いたします。
三日目(2021年9月11日(土))
13:05 招待講演
「学びのDX」と国際技術標準
GIGAスクール構想の先にある「学びのDX」の実現へ向けた最新の取組みを、政策・技術の両面からご紹介し、ベンダーの枠を超えたアプリケーションの相互運用を実現するIMS Globalの技術標準が、「個別最適な学び」にどのような役割を果たすことができるのかを考えます。
桐生 崇 文部科学省 大臣官房 文部科学戦略官/総合教育政策局 教育DX推進室長
藤村 裕一 鳴門教育大学大学院 教授 鳴門教育大学 大学院遠隔プログラム推進室長 ICT CONNECT 21 技術標準WG 副座長、同 校務系ー学習系情報連携SWGリーダ
14:15 招待講演 緒方 広明 京都大学教授
国際技術標準と教育データで教え方・学び方がこう変わる!
ギガスクール構想やBYODによって整備された、一人一台の情報端末を用いて教育・学習活動を行うことで、自然と教育データが蓄積されます。この教育データの標準化を行い、LTIやLRSなどの国際技術標準を用いることで、小学校から大学、社会人までの生涯にわたる学習ログを収集できます。この大規模な教育データを分析することで、教え方・学び方を変革でき、エビデンスに基づく教育を実現できます。 本発表では、デジタル教材配信システムBookRollを用いた学習ログの分析などの具体的な研究事例を報告し、この輪を社会全体に広めるために設立されたエビデンス駆動型教育研究協議会(EDE)の活動を紹介します。その上で、社会全体での教育データの利活用の未来について議論します。
15:05 事例紹介 中田 寿穂 日本マイクロソフト株式会社
パブリックセクター事業本部文教営業本部スペシャリスト 大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部 客員教授 秋田県 ICT教育推進プランナー
教育ツールのとしての Microsoft 365
~OneRoster, LTI対応について~
Microsoft 365 は Microsoft が提供するクラウドサービスの1つで、企業はもとより多くの教育機関でもご利用いただいております。本発表では、教育現場における Microsoft 365 の利活用についてと、IMS Global の OneRoster を使用したシステム間連携についてご紹介いたします。
畠田 浩史 株式会社内田洋行 ICTプロダクト企画部 部長
学習eポータル 『L-Gate』でのLTI、OneRoster対応
国際技術標準によるシステム連携、相互運用の事例として、学習eポータル『L-Gate』をご紹介します。『L-Gate』では、学びの保障オンライン学習システム(MEXCBT)や、教材・アプリとの接続にLTIを採用するとともに、OneRosterを用いた名簿情報の共有を実現していきます。
16:00 部会セッション
学習eポータル 標準モデルと国際技術標準
GIGAスクール構想で整備された1人1台環境を有効に活用し、すべての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現するには、さまざまな教材やツールが連携して動作するデジタル学習環境が必要となります。このデジタル学習環境のハブの役割を果たすシステムである学習eポータルは、文部科学省が提供するCBTである「学びの保障オンライン学習システム (MEXCBT:メクビット)」への各学校からの窓口であると同時に、さまざまな教材やツールの連携のハブ、またスタディ・ログを集約するハブとしての役割を持ちます。学習eポータル標準モデル version 1.0では、「学習eポータル」と「学びの保障オンライン学習システム」との接続に、LTI を採用しています。本発表では、学習eポータル標準モデル策定の背景とその内容をご紹介し、システム間接続に国際標準を採用する意義を考えます。
LTI・OneRoster部会 伊藤 博康 内田洋行教育総合研究所 所長
一般社団法人ICT CONNECT 21学習eポータルSWG リーダー
石坂 芳実 一般社団法人ICT CONNECT 21技術標準WG
16:35 部会セッション
1. CASEとCASE Network(10分)
CASEは、カリキュラム標準、スキル標準やルーブリック、シラバスの記載内容をMachine-readableにするためのIMS技術標準です。こうした学習目標や評価基準に関する情報は、教材にも、学習履歴データにも、修了証明書などデジタルバッジに記載され、機械(AI)による自動処理の際必要となります。北米におけるCASE Networkにおける実践を中心にご紹介します。
CASE研究会 山田 恒夫 放送大学 教授(CASE研究会・初中等教育分科会)
2. 我が国におけるCASEの実践事例(20分)
学習指導要領にコードが付与されたことで、アプリケーションや教材の内容を示すものとして学習指導要領を活用する道が大きく開かれました。
コードを含む学習指導要領の一部をCASE化した事例を報告し、学習分析や、学習履歴での本格的な活用に向けた次のステップを考えます。
森下 誠太 株式会社内田洋行 ICTプロダクト企画部(CASE研究会・初中等教育分科会)
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